ビジネス相関図を作る

プロジェクトを輝かしい成功に導くには専門分野を超えての情報伝達が必要不可欠だ。チームには2つの役割分担がある。ビジネスをリードするビジネスサイドの人間と、プロダクトを実現する技術サイドの人間だ。ビジネスサイドは、顧客が何を求めているか詳しく知っている代わりに、モノを作る術を詳しく知らない。技術サイドはその真逆だ。チームワークを発揮するには、ビジネスサイドは効果的に技術サイドに事業内容を伝える必要がある。技術サイドは自分が何を作っているのか大枠をつかむために、それを学ばないとならない。

ビジネス上の知識を開発サイドに伝達するときはドキュメントを作ると良いだろう。では、技術サイドの人間と初めて話すときに何を見せたら良いだろうか?ソフトウェアの仕様書はどうだろうか?仕様書はソフトウェアがどう動作すべきかを定めた書類だ。理想的な仕様書があれば、すぐにでもソフトウェアを作り始められる。しかし、現実はそううまくはいかない。なぜなら、ビジネスサイドが仕様書を作るのは時間がかかるわりに、問題のない仕様書を作れるケースのほうは稀だからだ。開発者にとっては情報不足で謎を呼ぶ逆効果な書類になることも少なくない。技術的に不可能なことが書かれてしまうことすらある。あなたがビジネスサイドの人間なら、役立つかどうか分からない仕様書に何時間もかける代わりに、まずはビジネス相関図を作ったほうがいいだろう。

ビジネス相関図は、ビジネスに係る登場人物とその関係をシンプルに表現した図だ。テレビドラマの人物相関図のようなものだ。どのようなユーザのタイプがあるのか?そのユーザ同士がどういう関係にあるのか?パートナーはいるのか?モノ・カネはどう動くのか?といったことを表現する。ビジネスの概要がつかみやすくなってくれば、開発チームは具体的にどういう物を開発すれば実現できるか、どうやって実現するかを考え出すことができる。このビジネス相関図は詳細にこだわって書く必要はなく、15分程度で書けるもので十分だ。図は、丸と矢印だけを使って描くとシンプルで十分なものが作れる。

例えば、AirBnBではホストとゲストという登場人部があり、宿泊費と部屋が動く
Figure: 例えば、AirBnBではホストとゲストという登場人部があり、宿泊費と部屋が動く

置き換えようとしているビジネスがある場合は、現状のビジネス相関図理想のビジネス相関図の2種類を用意すると良いだろう。現状のビジネス相関図は、あなたのサービスが使われていない今の状況を記述したものだ。理想のビジネス相関図のほうは、あなたのサービスを適用した後の状況を説明するものだ。この2つの対比で、実現したいビジネスモデルの概要や意義を把握しやすくなる。

例えば、クラウド請求書発行サービス「Misoca」では紙の請求書・郵送・銀行振込を置き換える
Figure: 例えば、クラウド請求書発行サービス「Misoca」では紙の請求書・郵送・銀行振込を置き換える